放って 軽やかに(法話)


 新年を迎え、「今年はこうしたい」「新しい自分になる」と決意を新たにする方も多いことでしょう。
新しい自分になるためには、まず古い自分を見つめ直し、時にはそれを手放すことが必要です。

 禅では「放下(ほうげ)」や「放下著(ほうげじゃく)」という言葉で、苦しみの原因である執着を投げ捨て、「本来の自己」を現し出すよう教えています。こだわりや心の重荷を手放すことで、私たちは軽やかに前へ進むことができます。

 今年は巳年です。
ヘビは成長するために古い皮を脱ぎ捨てます。
岩や木に身体をこすりつけたり、身体を巧みに動かして脱皮し、新しい皮膚を現します。
相当なエネルギーと時間が必要です。

 同じように、私たちが心の中にある古い考え方や執着を手放すことも、簡単なことではありません。慣れ親しんだものを手放すには、不安や戸惑いが伴うものです。

 「放下」とは、ただ捨てるだけではなく、本当に必要なものを見極めることでもあります。
その中で、過去の後悔や未来への不安といった心の荷物をおろすことができれば、心は軽くなり、「今」をより豊かに生きることができるでしょう。
 今年一年が、皆さまにとって軽やかで実り多いものとなりますように。 住職 大井龍樹 合掌 

 令和6年7月発行「おてらだより」より