変わりゆく一瞬一瞬を味わいながら生きる(令和7年2月)

変わりゆく一瞬一瞬を味わいながら生きる 諸行無常

「諸行無常」という言葉は、あらゆるものが「常に変化し続ける」ことを示しています。一般的にはネガティブな印象を抱きがちですが、これはこの世の真理を説いた教え(三法印の一つ)です。

 私たちが生きる世界も、私たち自身も、一瞬たりとも同じ状態ではありません。四季の移ろい、子どもの成長、老いていく親の姿・・・。すべてが変化し続けています。良いことも永遠には続かず、悪いこともまた然りです。

 お釈迦さまは、私たちが苦しみを感じるのは、この「無常」を受け入れず、「変わらないもの」を求めてしまうからだと説かれました。

 では、物事が移り変わることを嘆くのではなく、その変化を「味わう」ことができたらどうでしょうか。

 例えば、美しい桜の花を見たとき、「ずっと咲いていてほしい」と願うのは自然なことです。しかし、桜は散るからこそ、その一瞬の美しさが輝きを増します。もし一年中満開の桜があったとしたら、私たちはその価値を感じなくなってしまうでしょう。

 人の一生も同じです。若い頃は永遠に続くように思えても、やがて老いが訪れます。しかし、その変化を受け入れ、「今という時間を大切に生きる」ことができれば、人生はより味わい深いものとなるでしょう。 変わりゆくからこそ、今この瞬間が尊いのではないでしょうか。 

 昌寿院 大井龍樹 合掌