そよ風のように そっと よきことを(令和7年5月)

そよ風のように そっと よきことを
仏教のめざす利他行とは
仏教では、利他行の理想を「三輪清浄(さんりんしょうじょう)」といいます。
それは――
施す人(自分)、受け取る人(相手)、そして施す物(行為)――
この三つすべてに執着を持たず、ただ自然に行うという境地です。
つまり、「私は良いことをした」とも、「あなたは感謝すべきだ」とも思わない。
また、「これは素晴らしい行いだった」とすら思わない。ただ、目の前の人のために、できることを自然に行う。
それが、仏教の理想とする「無私の利他行」です。
世の中には、人のために尽くすことの大切さを説く教えや格言がたくさんあります。
その中でも、仏教の考える究極の利他行とは、「執着」や「はからい」から離れた行いであるとされます。
そう簡単にできることではありませんが、もしそのような行いが一度でもできたなら――それは、かけがえのない体験となるでしょう。
「そよ風のように 良きことを」
境内にたたずんでいると、頬にふっとそよ風が吹くことがあります。
そっと葉が揺れ、花の香りが流れてきて――なんともいえない心地よさを感じます。
そよ風は、誰に求められるでもなく、ただ静かに吹き、葉を揺らします。
誰の目にもとまらなくても、何の見返りもなくても、そこにいるだけで周囲をやわらかく包み込む――。
そよ風のように、そっと良きことを
何かを見返りとして求めるのではなく、ただ目の前の誰かのために、そっと手を差しのべる。
そんな、そよ風のような行いができれば、素敵だと思います。