おかげさまの心で(法話)

 この春、伊藤忠商事が「おかげさま」をキーワードにした広告を展開していました。「おかげさま」という言葉は、「もったいない」と同様に、日本人の心に根付いた精神を表す言葉です。大切にしたい言葉だと思っていたので、この広告は私の目にとまりました。
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 「おかげ」という言葉は、「陰(かげ)」に由来しています。古来、日本では物事に隠れている力や影響を「陰」と表現していました。この「陰」は、目に見えないけれども確かに存在し、物事を支える力を意味します。
 これに敬意を表して「お」をつけたのが「おかげ」という言葉です。「おかげさまで」という感謝の言葉には、とても深い意味があります。
 英語では「Thanks to you」と訳されることがありますが、もっと深みと広がりのある言葉だと思います。単なる感謝の言葉以上の意味合いがあり、それは目に見えない力への畏敬の念や、自然との調和の精神が含まれています。
 私たちは、様々な見えない支え、力に助けられています。家族の愛情、友達の助け、友情、他の人の労働、自然の恵み…。人だけに限りません。さらには、神仏も含まれます。
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 もうすぐお盆です。お盆は、ご先祖さまを敬い、供養する行事です。いうまでもなく、私たちが今ここにいるのは、父母・先祖の存在の「おかげ」があってこそです。お墓やお仏壇で手を合わすと、ご先祖や亡き人を身近に感じることができます。
 「おかげさまで無事に過ごしてます」とご先祖さまに報告し、あらためて「おかげさま」の気持ちでおまいりしてください。きっと皆さまも、安寧や力を得ることができることでしょう。今年も暑い夏となりそうです。ご自愛のうえ、心穏やかなお盆をお迎えください。

令和6年7月発行「おてらだより」より