心の手綱を軽やかにあやつる(法話)
本年はうま年。馬は古来、その力強い脚力としなやかな体で、人々の暮らしを助けてくれる身近な存在でした。
昔の人は、ただ速く走る馬よりも、「よく止まれる馬」を信頼したそうです。止まるべき時に止まれぬ馬は、自分も、そして人も危うくしてしまうからです。
禅に「心猿意馬(しんえんいば)」という言葉があります。
心は猿のように跳ね回り、意は馬のように走り回る――人の心の落ち着かなさを言い表した言葉です。心も意も、放っておけば、喜びや不安、怒りや欲に引かれ、勝手気ままに走り出してしまいます。
だからこそ、心の手綱を取り、よく調えることが大切です。心を力で押さえつけるのではなく、心という「馬」をよく知り、よく御する。走るべき時には走り、止まるべき時には止まる――その加減を身につけることが、日々の修行でありましょう。
馬は賢く、信頼関係があれば人の手綱に応えてくれます。人は馬の呼吸を感じ取り、互いを信じて共に歩む。私たちもまた、自分の心を敵にするのではなく、賢い相棒として仲よく付き合っていきたいものです。時おり静かに息を整え、手綱を握り直し、「今ここ」に戻る時間を大切にいたしましょう。
本年が、皆さまにとって、心の馬と仲よく歩める一年となりますように。
「おてらだより」13号より(令和8年1月発行)

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