霧の中を 行けば 覚えず 衣湿る(令和7年11月)

霧の中を 行けば 覚えず 衣湿る

しらずしらずに、心は染まる

霧の中を行けば 覚えず衣湿る

亀岡は霧で有名です。晩秋から初冬にかけて、町中が深い霧に覆われます。

霧の中を歩いている時は、水滴に触れていることにさえ気づきません。 けれど歩いているうちに、いつの間にか衣服がしっとりと濡れてゆきます。

道元禅師は、正法眼蔵随聞記の中で、次のように示されています。

霧の中を行けば覚えざるに衣湿る。よき人に近づけば覚えざるによき人となるなり

知らぬ間に服が濡れている。
人の心も同じです。 まわりの言葉や態度に、知らず知らずのうちに染まっていくものです。

だからこそ、「何に触れるか」がとても大切になります。

よい言葉、あたたかい行い、穏やかな心にふれる時、私たちの心は静かに、やわらかく変わっていきます。
逆に、怒りや不満の声ばかりに囲まれていると、自分の心も知らぬ間に曇ってしまうものです。

環境は、私たちが思う以上に大きな力を持っています。

紅葉が、霜や冷気という外気にふれてその色を深めるように、 人もまた、よき縁にふれることによって、心の色をやさしく、あたたかく深めていきます。

「誰と歩むか」 「どんな言葉にふれるか」

それは人生の方向を決める、大切な選択です。

しらずしらずに、心は染まります。 染まりやすい心を持っている私たちだからこそ、よき人、よき言葉、よき縁のそばに身を置くことが、幸せへの近道になるのではないでしょうか。

昌寿院 大井龍樹 合掌