亀岡市仏教会 「令和6年度移動仏教講座」(住職雑記)
令和7年3月10日(月)に亀岡市仏教会主催の「令和6年度 移動仏教講座」に参加してきました。
会員寺院の住職や寺族、檀信徒の方々、総勢31名が参加し、宇治方面の名刹を巡りました。
今回の巡拝先は、昨年秋に国宝に指定された黄檗宗大本山 萬福寺、曹洞宗の宗祖・道元禅師の初開道場・興聖寺、そして世界遺産・平等院の三ヵ寺です。春の訪れを感じさせる穏やかな天気に恵まれ、とても暖かい一日でした。
国宝・ 黄檗宗大本山萬福寺
まず訪れたのは、昨年、国宝に指定されたばかりの黄檗宗大本山・萬福寺。立派な総門を抜け三門をくぐると、まるで中国にいるかのような異国情緒あふれる伽藍が広がっていました。

黄檗宗の開祖である・隠元隆琦禅師が祀られている開山堂をお参りし、そのご遺徳に思いを馳せます。江戸時代の初めに弟子とともに中国からわたってこられました。隠元和尚が中国から伝えたものとして、「インゲン豆」がよく知られていますが、ほかにも「スイカ」やタケノコやレンコンを食材として使う料理や調理法をもたらしたそうです。文化面ではPCなどで一般的に使われている「明朝体」をその一つだそうです。
印象的だったのは、黄檗宗独特の「般若心経」読誦。黄檗宗は、中国明の時代に制定された法式で法要を行っています。当時の中国明代の読み方である「黄檗唐韻」という読み方が今なお残っています。臨済宗では、「黄檗読み」などとも呼ぶようです。
私たちが普段読む般若心経は音読み(呉音)ですので、まったく別物に感じました。曹洞宗で読誦する、陀羅尼に近い感じです。
黄檗宗では、ご本山修行中は黄檗読みで、地元のお寺に帰れば両方読んでいるということでした。



また、法堂では坐禅もさせてもらいました。こちらも曹洞宗とはすこし違うやり方。面壁はせずに対面。そして、丸い坐蒲も使いません。警策の受け方も違います。臨済宗のやり方と似ていました。坐禅をする単も高く、禅堂は単はもっと高いそうです。

同じ禅宗ですので共通していることが多いのですが、食事もイスと机を使うということで、ところどころ中国様式がみられて面白かったです。
仏具の色使いも、中国的な明るい色が使われており、荘厳(飾り)が、中華風に感じました。
そして、お楽しみの普茶料理。今回は、予算の関係で、有名な大皿料理ではなかったのですが、普茶料理のエッセンスは感じることができました。「もどき料理」として有名な普茶料理ですが、中華料理のように、油を上手につかって揚げたり、炒めたりするところが、精進料理でありながら、そのレパートリーの広がりつながっているのだと感じました。
黄檗宗のお寺は全国にわずか444ヵ寺だそうです。曹洞宗は約1万5千ヵ寺。京都府だけでも200カ寺以上。比べるとその規模の違いは歴然で、ご本山の維持には大変なご苦労があるだろうと感じました。






曹洞宗 道元禅師初開道場 興聖寺

次に訪れたのは、曹洞宗の興聖寺。ここは、私自身が曹洞宗青年会の「秋冷禅のつどい」などで主催者として何度も訪れた、馴染み深いお寺です。(昔、男梅のCM撮影もありました!)
今回は、平等院の駐車場から徒歩で向かい、喜撰橋を渡り、朝霧橋を越え、琴坂を上るルート。普段は車でお寺に横付けすることが多いのですが、歩いてみると、今まで気づかなかった風景や自然の息吹を感じることができました。琴坂も歩くと結構な上り坂ですね。
興聖寺では、翌日の3月11日にあわせて、『東日本大震災 慰霊法要』を営みました。参加者一同で読経し手を合わせ、過ぎ去った歳月とともに震災で犠牲になった方々への祈り捧げました。
その後、法話をしてくださったのは安逹瑞樹 師。安逹 師は、日本一の法話を競う「H1法話グランプリ」の初代チャンピオンです。ご自身の震災支援の体験を交えてお話しいただきました。全国曹洞宗青年会の会長も務めた方ですが、驚くほどフットワークが軽く、「偉い」方なのにまったく偉ぶらないその人柄はさすがの初代王者です。






世界遺産・平等院へ
最後に訪れたのは、世界遺産・平等院。この1年半でもう3回目の訪問です。それまで一回しか訪れたことがなかったのに、不思議と続くときは続くものですね。
ボランティアガイドの方が丁寧に説明してくださり、十円玉にも描かれている鳳凰堂の荘厳な姿を間近に拝することができました。
さらに、鳳凰堂内に入り、中央に鎮座する阿弥陀如来像に手を合わせることができました。
宝物館で見た雲中供養菩薩像が実際に堂内にある様子がわかり、その優美な姿や表情の繊細さに目を奪われました。
千年の時を超え、今もなお人々の信仰を集めるその力。
末法の世を憂い、極楽浄土に希求した藤原氏の思いと、その思いを形にした、職人たちの力量に思いをはせ、改めて仏教美術の奥深さを感じました。




巡拝の旅を終えて
この日の歩数は約1万歩。心地よい疲れとともに、仏教の奥深さを再認識する旅となりました。
特に萬福寺の国宝指定を受けた伽藍は一見の価値ありです。萬福寺は国宝に指定されたものの、観光客が(心配になるほど)少なく、落ち着いてお参りできました。ただ、最近はTVや雑誌でもよく取り上げられています。これから気候が暖かくなるにつれて、今のような静けさを味わうのは難しくなるかもしれませんね。まさに「国宝」にふさわしい威厳と風格を感じました。
観光といえば「京都市内の有名寺院」となりがちですが、今回、宇治は比較的観光客が少なく快適で、見どころがたくさんあることを再認識しました。宇治川のほとりをゆっくりと歩くのも気持ちいいものですよ。
興聖寺の裏手の朝日山には展望台があり、対岸の平等院を望むことができるそうです。以前から、気にはなっているのですが、行ったことがないので機会があれば、そのあたりも含めてまた訪れてみたいと思います。