大阪・関西万博 閉幕しました② ~物に心をよせる~

 

万博の閉幕のニュースの中で、印象に残った話題がありました。

 パビリオンで働いていた方々が着用していたユニフォームの回収方法について、「制服にはさみを入れて返却するように」との指示が出されたというのです。
 主催者側は「貸与品であり、リサイクルを前提に支給したため、確実に回収するための措置」と説明しましたが、半年間その服を着て働いてきた人たちにとっては、思い出の詰まった大切な品。
「切り刻むなんてできない」との声が多くあがり、最終的に方針が変更されたそうです。

 この出来事を耳にして、「なんとも日本人らしい」と感じました。
日本では昔から、物にも魂が宿ると考えてきました。
古くなった筆を供養する「筆供養」、針を供養する「針供養」、さらにはそろばんや包丁の供養など多数あります。
長年使った道具に「ありがとう」と手を合わせる。その心の奥には、物を大切にする気持ちと、人を思いやるやさしさがあるように思います。

万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」でした。
身体の健康や技術の進歩だけではなく、心の安らぎや精神の豊かさがあってこそ、ほんとうの「いのちの輝き」と言えると思います。


ユニフォームの一件を通して、日本人の持つ繊細でやさしい感性、そして「物にも心を寄せる」温かな文化を改めて感じさせられました。

大井龍樹 合掌